<2003.6.22>  失態
・・・・くもり・・・・


帯状のガスが 次々と車のヘッドライトに浮かび上がる

久方ぶりと成る 一人旅の侘しさはエリッククラプトンの

曲が心和ませてくれる  同じ楽曲が流れる車を駆り

あらゆる場所へ 一人向かったあの日 改めて過ぎ去る

時の速さと 会わせ持つ儚さに つい感傷的にもなる。


ここ数日 釣人はおろか 山人さえも訪れた痕跡さえ

残らない渓 そうさ今日もおいら一人だけのものだ・・・・

流れは 密集する背の高い草が 水際まで貼りだし

水中突破の連続と成り 小渓ながらも結構キツイ!  水中から伸びる葦の際から 次々と跳び出す

ヤマメは 七寸〜八寸のサイズが多く 鋭角な反応で竿を絞めこむ・・・ このクラスが ヤマメ釣りと

しては特に楽しいと感じるのだが? 今となっては0.6号のハリスを 苦も無く持ち去って行った多くの

化け物達と 荒れ果てた現在のこの流域での再会を望む事は もう叶わないのだろうか。


・・・・・”な なっ 無い?” 全身の力が抜け 意気込みが急速に萎んで行くのを感じた・・・・・

昨夜辿った林道を 左下に流れを望みながら車で下る やがて姿を現し出す 少し古めの堰堤を攻め

今回の釣行を 終える物と決めていた・・・・・ 堰堤上からそっと覗き込むと 此れまで多くの大物を

授けて呉れたプールは 多量の土砂が入った事で なんとも貧弱な姿に変わっては居た が私には

上流から流れ落ちる餌へと 定位のまま今か々と待ち侘びる 大ヤマメの気配をビンビンと感じていた

行かねばなるめい。” 其処の場所へと立つ為には 一旦下流へと向い 泥付きの斜面を這い上がり

少々ヤバイルートを 抜けるのが条件となるのだ。

手掛りが皆無の泥付き斜面では フエルト底の足袋は良く滑りやがる ”ワオッ!” 足元の塊ごと

数b程ずり落ち 膝から胸まで 泥々になってしまった ”此処までして 行かにゃあならんのかい!

誰に云うでもなく ボヤキが口を突く。

やっとの思いで辿り付いた目的の水際 姿を隠す遮蔽物

さえも無い事で 身を屈め匍匐前進よろしくジワジワと

手の届くまで寄る  此処で尺上一本 あそこでもう一本

と 先程までのボヤキは何処へやらニンマリ笑う自分の

横顔を意識する 次に起こる不幸を知る事さえも無く?

さあ 勝負!” 首に吊るす餌箱を胸の辺りで弄ると

ン? 無い? どっ何処へ?” 此処までの行動全てが

僅かな時の経過に 脳裏を横切る ”げっ 車か・・・!

何と言う事態 なんたる失態 思わず傍らに座る石に

ヘタリ込む 足元はあの時代と変わらずサラサラと洗う。

                           OOZEKI